こんにちは。電装担当の植平です。
前回の部品取り外し編に続き、今回は9月以降に行ったオーバーホール作業編をお送りします。
電装部門が取り扱う部品は、灯火類・各種スイッチ・メータ類・ワイパ系・オルタネータ・スタータ・ヒータ系・ラジエータ・それらを繋ぐワイヤハーネスなど比較的多いので、前置きはほどほどにさくっと本題に入りたいと思います。
それではさっそく作業の様子を順を追ってみてみましょう。
まずワイパ系からです。

右側の黒い円筒形の物体がワイパモータです。そこから二本のワイパアームに動力を伝えるワイパリンクが伸びています。基本的な構造は現代のものと変わりありませんね。

ワイパモータを分解するために、まずはワイパリンクを繋ぐボールジョイント部を外します。ボールを受けている部分は樹脂製なので、壊さないように慎重に外します。

ワイパモータをばらした状態です。各部に古いグリスが付着しているのが見えます。

清掃した後の姿はこちら。

↑ブラシの残量と…

コンミュテータの状態を確認します。
どちらも問題なさそうですね!
こんな感じで点検を済ませると、各摺動部をグリスアップして組付けてワイパモータのオーバーホールは完了です。
ワイパモータは組付け時の位置決めがとても重要なのですが、その割にこのシャレードのワイパモータは目印となるものがなく、きちんと組めているか心配でした。分解前に十分に記録を取ったので結果的に問題なく動作してくれましたが、そうはいっても動作テストするまではなかなか不安でしたね。
続きましてはオルタネータです。こちらが分解前の状態。

ケースを開けると…

ロータと…

ステータと呼ばれる部品が出てきます。
ステータの内側でロータが回転して発電するわけですね。

ブラシの残量を見てみると、さきほどのワイパモータとは異なり、こちらはかなり減っていることがわかります。オルタネータはエンジン作動中は常に回転しているものですから消耗も早いのでしょう。
ということでブラシを交換します。

交換したあとの姿がこちら。見違えるほど長くなりました。
ベアリングの状態も確認しましたが全く異常なし!
これで今後も頑張って発電してくれることでしょう。
あとはグリスアップして組付けて終了です。
続きましてはスタータです。

スターターモータの一部
構造もオーバーホール作業も先述の二つと非常に似通っているのでそれは割愛しますが、ここで着目するのはその見た目。

先ほどのオルタネータもそうでしたが、やはり古いだけあって外見に年季が入っていますよね。
機能には全く関係ないですが、どうせなら若返らせちゃいましょう。

他の部門の仲間にも手伝ってもらってひたすら磨きます。(ありがとう!)

先ほどのスタータのケースの一部。

表だけでなく裏側もこのとおり。

こちらは先ほどのヨーク。
スタータだけでなくオルタネータやその他も含めて、磨けそうなパーツは片っ端から磨いていきます。
そしてマスキングを念入りに行った後は…

塗装!

このとおり、まるで新品のようになりました。
見た目がきれいになると気分がいいですね。
ただ達成感のあまり組み立てた後の写真を撮るのを失念しておりまして、完成品をお見せできないのが残念です…。
気を取り直して、続きましてはラジエータです。

曲がってしまったフィンがそこかしこに見受けられますね。
フィンが曲がっていると冷却効率が落ちてしまう上、見た目もよろしくないので直しましょう。

マイナスドライバーでひとつひとつフィンを起こしていきます。

フィンを直して塗装した後がこちら。
かなり奇麗になりました!
続いてはラジエータファンです。
純正ではラジエータファンとラジエータファンスイッチが電源に直列に接続されている状態であるため、信頼性向上のためにリレーを挟みます。

頻繁にON/OFFする部品ですし、ラジエータファンって結構大電流が流れますからね。
元通りに直すだけではなく、改善できるところはできるだけ改善していきましょう。
これにてラジエータのオーバーホールは完了です。
どんどんいきましょう。次はヒータです。

写真に写っているのがヒータコントロールユニットです。レバーを動かして吹出口や内外気の切り替え、暖房と送風の切り替えを行う部品です。

インパネを取り払った状態はこんな感じ。鉄の板状の物体がヒータコントロール部であり、そこから生えているレバーからワイヤーが伸びているのが分かります。
このワイヤーを通じてレバーの動きを各フラップに伝達することで、空気の流れをコントロールしているんですね。実はこのヒータコントロール部、吹き出し口の切り替えができないという不具合があることがレストア開始前から分かっていました。色々と触って確かめたところ、ワイヤーがなめらかに摺動せずにたわんでしまい、うまく力が伝達されないことが原因と判明。そこで清掃と注油を二回行うと、びっくりするくらいなめらかに動くようになりました。その他、ダクト内のボロボロになったスポンジを張り替えるなどしてヒータのオーバーホールは完了です。
続いてはメータです。

このシャレード、グレードの都合上タコメータが付いていないので後付けする必要がありました。
一生懸命配線を追いかけることで、点火信号を伝える配線が運転席まで来ていることは判明したのですが、タコメータ装着グレードには付いているノイズフィルタが当シャレードからは省略されていたため、これは自力で作成します。

これが完成したノイズフィルタです。中に抵抗とコンデンサが入っています。カットしたい周波数から必要な抵抗とコンデンサの組み合わせを割り出して作成しました。
これをどこに取り付ければいいのか、実際の配線を辿りながら探すのがかなり大変でした…。
ここまで頑張ったタコメータがちゃんと動かなかったらどうしよう…という不安も相当なもので、初めてタコメータが動いているのを見たときはほっと胸をなでおろしたものです。
ちなみに変なノイズが乗ることもなく、指針の追従も問題ありませんでした。本当に良かった…。

もう少しお付き合いください。最後はワイヤハーネスです。
ワイヤハーネスはまず最初に入念に点検しました。

一見問題なさそうでも被覆を剥けば中身はこんな風にボロボロになっている可能性がありますからね…。
まあこれは一番ひどいパターンですが、ほかにもこのままでは断線するかもと考えられる箇所はいくつもありました。
そのような部分は補修したり配線を引き直したりします。

それと並行して実体配線図も描いていきます。

それが終わった配線はコルゲートチューブで包んで、車内に這わせます。ただ這わせるだけと思いきや、狙った場所に狙ったカプラーがこないといけないので結構大変です。

インパネを取り付け…
だいぶ元の姿を取り戻してきました。
あとは間違いなく配線を繋げば完成です。

だいぶ端折りながら駆け足で紹介させていただきましたがいかがだったでしょうか。これにて電装部門のオーバーホール作業編を終わりたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。